ご相談様データ
菅野さん(37歳 男性)
飲食店オーナー
家族構成
妻(お店の手伝い)
子供2人
相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)
弊社主催の経営者向けセミナーにご参加いただいた際、節税について興味を持ち相談に至る。
ご相談内容:役員報酬は多い方が良いの?
税理士さんからは「社長なんだから役員報酬はこのくらいとらなきゃダメだ」と言われてるんですけど、そうなんですかね・・・・。
ありがちなアドバイスですね。
基本として、できるだけ役員報酬は少ない方が良いですね。
結局その方が個人の税金や社会保険料で引かれる分が少なく、手元に残るお金が多くなりますから。
そうですよね、そう思うんですよ。
でも、会社がピンチのときは社長がお金出さなきゃいけないんだから、社長が自分で蓄えておかなきゃダメだって言うんです・・・。
う~ん、それなら個人の収入から税金と社会保険料引かれて個人で蓄えるのでなく、会社で税金引かれて会社の資産として蓄えた方が良いですよね。
しかも、会社にお金を残せた方が銀行から見ると「安定している会社」というように見られて、有利な条件でお金を借りることができるようになります。
会社がピンチにならないように、銀行がお金を喜んで貸してくれる企業になるために、しっかり会社の資産としてお金を残しておかねばならないのでそのアドバイスだとむしろ逆効果ですよね。
ポイント:役員報酬は経営者がプライベートで必要なお金の分だけに抑える
①個人で引かれる税金、社会保険料が安くなる
②会社で引かれる社会保険料が安くなる
③経営が安定する → 銀行の評価が良くなる
会社の利益が出ることは良いこと!
役員報酬の決める前に家計の収支の把握とライフプランを考える
よく税理士さんのアドバイスでも多いことなんですが、「税金高くなるから役員報酬をたくさん払った方が良い」ということ。
これ、税金をたくさん払うってことは、その分儲かってる会社ってことですよね?
客観的に見て、これって悪いことですか?
儲かってるんだから、良いことですよね。
税金をいっぱい払うことにはなるので勿体ない気もするんですけどね・・・
そうなんです。
会社にとって利益が出ることはたしかに税金をたくさん払うことにもなるんですが、むしろ良いことなんですよ。
税金をできるだけ払いたくないのならば社員さんのモチベーションアップのための賞与を払ったり、社長が自分の時間をもっと増やすために人を育てたり、色々使い道はありますので、そうやって利益を再投資すればその年の税金を抑えながら更なる利益に繋がるように使えますよね。
しっかりお金が残せるように上手に税金を減らすのは良いのですが、そうでなければ税金を払ってでも利益はできるだけ残した方が良いのです。
「売上の最大化、経費の最小化」
企業として当たり前のことですね。
普通に考えればそうなんですよね・・・
なんか、利益を出すことが税金をたくさん取られてしまい勿体ないって思ってしまうんですよね。
そうなんです。
「節税」することの本質は「手元にお金を残すこと」のはずですが、「税金勿体ないから・・・」って考えてしまうと逆に手元にお金残せなくなっちゃうんですよね。
役員報酬の決め方はこういう点も注意した方が良いですね。
役員報酬は少ない方が良いのですが、かと言って無理に減らす必要はありません。
今の家計の支出がどの程度あるか、そしてこれからのライフプランの中で必要なお金を準備できる程度で設定しておくと良いですね。
なるほど~
毎月、何にいくら使っているか、あんまり把握できていないんですよ・・・・
そうですね、ここ大事ですのでしっかり「見える化」しておきましょう。
家計も経営も、共通しているのはお金の出入りをまず「見える化」することです。
見える化できていればもし収入が減ってしまいマイナスしてしまったとしても、何を改善すれば良いかがわかりますよね?
ここが見える化できていないと、ピンチに弱い経営、ピンチに弱い家計になってしまうんです。
大体で良いから、何にいくら使っているかは把握しておきましょう。
なるほど・・・
適当にやってましたけどそれじゃダメなんですね・・・
はい、企業経営も家計も借金まみれでどうにもならなくなる人に必ず共通することが「見える化」できていないことです。
今は家計簿アプリもありますし、クレジットカードの明細でも把握できるのでしっかり数字を把握しておきましょう。
要は、役員報酬は必要な分だけが良いってことで、ムダにたくさん取らないことが基本ですね。
ポイント:①家計の収入と支出を把握すること → 家計簿アプリ、クレジットカードの明細でチェックする
②ライフプランを考え、今後の人生で必要な金額を知る
役員報酬を抑え、上手に経営者にお金を残す方法
さて、役員報酬は必要な分だけにして、税金払ってでもできるだけ会社に資産を残した方が良いというお話をしたのですが、とはいえできるだけ税金や社会保険料を上手に抑えながらお金を残したいですよね。
そんな上手に経営者にお金を残す方法を幾つか紹介します。
①企業型確定拠出年金 or iDeCo+の活用
②出張旅費規程の導入
③生命保険は会社契約に
④法人クレジットカードの活用
⑤役員退職金の活用
1つ目は企業型確定拠出年金、iDeCoプラスの導入です。
確定拠出年金は自分の将来の年金を自分でつくるための制度で、会社の経費で社長や社員さんの老後のためのお金を出すことができます。
iDeCoプラスは個人で加入するiDeCoの掛金を、企業型確定拠出年金のように会社が上乗せで出すことができる制度です。
老後の資金って、本当は役員報酬で受け取った金額を自分で積み立てますよね?
でも、役員報酬を受け取れば税金や社会保険料がそこに掛かってきます。
会社で掛金を出すようにして、役員報酬を抑えれば税金や社会保険料を節約できますよね。
企業型確定拠出年金を導入すれば、毎月最大で55,000円積立できますので、老後の資金をこれだけでも作れてしまうかもしれませんね。
なるほど!
そんな方法があるんですね。
そうなんです。会社の経費で老後の資金作れるだけでなく、この制度は投資を使って将来のお金を上手に増やすことができることも大きなメリットですね。
それから、もし県外出張や宿泊が多いようでしたら出張旅費を使うことも良いですね。
出張旅費規程を作っておくことで、県外に仕事や研修等で出かけた際には、出張中の食事代や身の回りの必要なものを揃えるお金としてこちらも会社からの経費で払ってもらうことができ、菅野さん個人でも非課税で受け取れるんです。
よく県外に勉強しに行きますよ!
そっか、そうするとそんなにおれ役員報酬要らないですよね。
あと、生命保険を会社契約にしておくとか。
受け取り方や受け取り時のルールをしっかり作っておけば個人で払ってた保険料も会社で支払い、役員報酬を抑えることができますよね。
ただし、個人契約にしておいた方が良い保険もあるのでそこはよく選ばなければですね。
なるほど・・・
そんな方法も・・・
なんか、ここまででもかなり役員報酬を抑えることできそうな気がしますね。
そうですね。
でも、まだありますよ(笑)
あとは役員退職金を利用するという方法もありますね。
役員退職金は役員報酬とは違い社会保険料の算定の対象外ですし、一定額までは損金で支払いできます。
会社の資産として積立てますので、純資産がどんどん増えていき銀行から見れば強い経営基盤を持った企業と評価されます。
確定拠出年金をメインに、必要に応じてこちらも組み合わせてみると良いと思います。
そっか・・・
社長だから退職金なんて作れないって思ってましたけど、会社で積み立てちゃえばいいんですよね。
そして、法人のクレジットカードを利用すると良いですね。
クレジットカードですか??
はい。
食材やドリンクの仕入れや、色々な経費でクレジットカード払いできるものありますよね?
事業やってると一般家庭よりも使う金額が大きいので、貯まるポイントも大きいんですよ。
それに、クレジットカードの特典で高級ホテルを無料で宿泊できるようにもできます。
そうやって個人で使うお金を抑えてもいいですし、研修に行った時に高級ホテルに泊まって宿泊費を抑えてもいいですよね。
そんなこともできちゃうんですか!!
知ってると知らないでは大違いなんですね・・・
そうですね。
こうやって色んな方法があるので、組み合わせてみると会社と個人に残せるお金をもっと増やせるんですよ。
役員報酬を決める際には、こういった会社にしっかり利益を残し、社長の手取りのアップを可能にする仕組みを作ると手元に残るお金は大違いなんです。
ご相談を終えて
その後、菅野さんには税金の計算方法や社会保険料の算定の方法を教え、ご自身にとって適正な報酬額を決めていただきました。そして、iDeCoプラスの活用と、出張旅費規程の作成、クレジットカードの活用を同時に行っていきました。
役員報酬を決める際には、「利益を減らして税金を払わないように」といった理由で必要以上に高い役員報酬を設定していることがあります。
しかし、企業の仕事は利益を最大化することですので、税金を払いたくないからと利益を減らすようなことはするべきではないでしょう。
大事なことは税金を払わないことではなく、法人と個人に上手にお金を残すことで、この本質を忘れないようにすることが大切ですね。