ご相談者様 DATA
【年齢】50歳
【職業】大手物流会社・係長(年収600万円)
【性別】男性
【家族構成】妻48歳(パート・年収80万円)、長女22歳(社会人)
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相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)
「YouTubeで高配当株投資の動画をよく見るようになって、NISAの成長投資枠で配当利回り5%くらいの銘柄を中心に集めてきました。昨年は配当金が年間30万円を超えて、『このまま続ければ、定年後は配当金で生活の足しになるかも』と本当に嬉しかったんです。
ところが、今年になって保有している2社から減配の発表がありました。配当金が減っただけでなく、株価も下がってしまって、正直ショックでした。
ずっと『配当利回りが高い会社=良い会社』だと思って選んできたんですが、それは間違いだったんでしょうか?ウォーレン・バフェットは世界一の投資家と言われていますが、配当よりも何を重視しているのか、ぜひ教えてください。」
ご相談内容
【ご相談でお話しした内容】
減配通知が届いた朝——「高利回り=優良企業」という思い込み
ご相談者様が感じられたショックは、高配当株投資を実践されている多くの方が経験される「壁」です。配当利回り5%という数字を見ると、「銀行預金とは比較にならない利回りだ」と魅力的に感じますよね。
しかし、ここに高配当株投資の最大の落とし穴があります。
配当利回りが高いということは、必ずしも「良い企業」であることを意味しません。むしろ、「株価が大きく下落している企業」である可能性があるのです。
配当利回りの計算式を思い出してください。
配当利回り(%)= 1株あたり年間配当金 ÷ 株価 × 100
この式の「分子」は配当金、「分母」は株価です。利回りが高くなるパターンは2つあります。
- 分子(配当金)が増える → 企業が業績好調で増配した結果
- 分母(株価)が下がる → 市場が企業の将来を悲観して株価が下落した結果
同じ「配当利回り5%」でも、この2つでは意味がまったく異なります。前者は喜ばしい高利回りですが、後者は危険信号の高利回りなのです。ご相談者様が購入された銘柄の中で減配を発表した2社は、おそらく購入時点ですでに株価が下落傾向にあり、見かけ上の利回りが高くなっていた可能性があります。
配当利回りの「分子」と「分母」を分解する
では、「分子主導の高利回り」と「分母主導の高利回り」を見分けるには、どうすればよいのでしょうか。ご相談者様には、過去5年間の「配当金の推移」と「株価の推移」を並べて確認する方法をお伝えしました。
具体的には、以下の3つのパターンに分類できます。
パターンA:健全な高利回り(分子主導型)
配当金:毎年増加または安定
株価:上昇または横ばい
特徴:企業の業績が好調で、株主還元を強化している
パターンB:危険な高利回り(分母主導型)
配当金:横ばいまたは減少傾向
株価:下落傾向
特徴:業績悪化で株価が下がり、見かけ上の利回りが上がっている
パターンC:最も危険な高利回り(両方が悪化型)
配当金:減少傾向
株価:大幅下落
特徴:減配が近い、または財務状況が悪化している
ご相談者様の保有銘柄を一緒に確認したところ、減配を発表した2社はいずれも「パターンB」に該当していました。見分けるポイントをまとめると、こうなります。
- 過去5年間の1株あたり配当金(DPS)の推移を確認する
- 同期間の株価チャートを確認する
- 配当が増えているのに利回りが高い → 健全
- 配当が横ばいなのに利回りが高い → 株価下落の可能性あり
バフェットが配当より重視する「1ドルテスト」とは
ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイは、1967年以降、一度も配当を出していません。世界一の投資家が経営する会社が配当を出さないというのは、意外に感じられるかもしれません。
バフェットは、留保した1ドルにつき少なくとも1ドルの市場価値が株主のために創出されるという合理的な見通しがある場合にのみ利益を留保すべき、と述べています。これが「1ドルテスト」と呼ばれるバフェットの判断基準です。
この言葉は、「1ドルにつき少なくとも1ドルの市場価値を創出する合理的な見通しがある場合にのみ利益を留保すべき」(1984年株主への手紙など)という発言を基に、一般的に称されている名称です。
バークシャー・ハサウェイは、この基準を長年クリアし続けてきました。1965年から2023年までの約60年間で、バークシャーの株価は約4万4,000倍(年率複利約19.8%)に成長しています。
バフェットは「高配当企業」を好んでいるのではありません。
「1ドルを預けたら1ドル以上の価値を生み出せる、高い再投資効率を持つ企業」を好んでいるのです。
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配当性向80%超の企業が抱えるリスク
配当の「持続可能性」を判断するために、もう一つ重要な指標が「配当性向」です。
配当性向(%)= 1株あたり配当金 ÷ 1株あたり純利益(EPS)× 100
配当性向が高すぎる企業には、以下のリスクがあります。
配当性向80%以上の企業のリスク
- 業績悪化時に減配しやすい: 利益のほとんどを配当に回しているため、余裕がありません。
- 成長投資の余力がない: 将来の成長のための資金が少なくなります。
- 財務の悪化リスク: 利益以上の配当を出すために借入を増やすケースもあります。
逆にご相談者様にお伝えしたのは、配当性向30〜50%程度の企業は業績が多少悪化しても配当を維持できる「余力」があるということです。銘柄選びの際は、配当性向は50%以下を目安にすることをお勧めします。
「高配当株」「増配株」「インデックス」——長期リターン比較
米国株式市場における3つの代表的なETF(上場投資信託)の長期リターンを比較してみましょう。
| ETF | 年率リターン(概算) | 特徴 |
| VYM | 約8.5% | 配当利回り重視 |
| VIG | 約10.2% | 連続増配企業に集中投資 |
| VTI | 約10.0% | 米国株式市場全体 |
興味深いのは、「高配当株ETF(VYM)」よりも「増配株ETF(VIG)」のほうが長期リターンで上回る傾向があることです。重視すべきは「配当金額」ではなく「配当成長率」なのです。
NISAで「配当成長ポートフォリオ」を組む具体的な方法
ここまでの内容を踏まえて、日本株で「配当成長銘柄」を選ぶ基準をご提案しました。
- 連続増配年数10年以上
- 配当性向40%以下
- ROE(自己資本利益率)10%以上
- 自己資本比率40%以上
また、NISAで米国株・米国ETFを保有する際は、米国で源泉徴収される10%の税金がかかる点に注意が必要です。国内株であればNISA口座では完全に非課税となるため、税制面では日本株の増配銘柄にメリットがあります。
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「配当で生活する」夢を正しい道のりで叶えるために
「配当金で年間100万円」を得るために必要な資産額を整理してみましょう。
| 配当利回り | 必要資産額 |
| 3% | 約3,333万円 |
| 4% | 約2,500万円 |
| 5% | 約2,000万円 |
利回り5%を狙えば必要額は減りますが、減配リスクが高まります。より現実的なのは、最初から高配当を求めるのではなく、「増配する力のある企業」に投資し、時間をかけて配当収入を育てていくアプローチです。
65歳時点で年間80万円でも、増配が続けば75歳時点で年間130万円以上になる可能性があります。「配当が成長する」という複利効果を味方につけることが、夢を叶える近道です。
ご相談を終えて
ご相談者様からの感想
「正直、配当利回りの高さだけを見て銘柄を選んでいた自分が恥ずかしくなりました。バフェットが配当を重視していないという話は意外でしたが、『1ドルテスト』の考え方はすごく納得できました。
今後は『配当性向40%以下』『10年以上連続増配』という基準で選び直してみます。65歳で年間80万円、70歳で年間100万円という道のりを見せていただいて、『配当で生活する』という夢が少し現実的に見えてきました。焦らず、着実にやっていこうと思います。ありがとうございました。」
FPからのまとめ
「配当利回りが高い=良い企業」という思い込みは、実は危険な落とし穴です。高利回りの裏側にある「なぜ高いのか」を見極めることが、減配リスクを避ける第一歩です。
バフェットが教えてくれるのは、「配当金額」ではなく「企業が生み出す価値」を見ることの重要性です。焦らず、時間を味方につけて、配当収入を「育てていく」という視点を持っていただければと思います。
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