事業者情報
事業者名 | 有限会社 となりの工房 |
導入制度 | iDeCo+(イデコプラス) |
社歴 | 30年未満 |
加入時期 | 2020年 |
従業員数 | 5名 |
業種 | 製造業 |
所在地 | 岡山県 |
Webサイト | www.tonarino-kobo.jp |
インタビュー
40歳を過ぎたら今度は自分たちの老後を考えていかないと
御社のことを教えてください
福祉機器の製造業で、主に車椅子を作っています。今年で29年目になるんですが、あっという間でしたね。最初は木工で、普通の家具を作っていました。そこから、障がいのある方が使う家具を作る会社へと変わっていきました。
我々の身近に、障がいのある方がいたというわけではありませんし、福祉についてもまったく知らないで育ってきたんですが、偶然に、そういう家具作りをしているグループと知り合いになったのがきっかけで始めました。
従業員さんは何名でしょう? みなさん厚生年金に加入されていますか?
今は5名の従業員がいて、その内4名が厚生年金に加入しています。あと1人は扶養の範囲内で働くパートさんなので加入していません。平均年齢は40歳~45歳くらいです。
企業年金や退職金制度はありますか
まだ4年ぐらいですが、中退共(中小企業退職金共済制度)を掛けています。長く勤めている方に関しては、さかのぼって掛ける手続きをして、少し増やしていっています。
iDeCo+はどこでお知りになりましたか
2年前、前田さん(FP相談ねっと登録FP)とオンラインでやり取りさせていただいた時に教えていただきました。iDeCoは知っていたんですが、iDeCo+は知らなかったので、そこからいろいろ調べたのが始まりです。
私自身は、iDeCoに平成16年(2004)から加入していました。一緒に仕事をしていた夫と2人だけで入っていました。そしたら徐々に資産が増えていくのを見て「これは積み立てとしていいんじゃないかな」と感じました。
私が加入したのは40歳前後でしたので、そろそろ40歳になる人たちにもiDeCoを薦めたんです。今までは子育てとかのお金で必死だったと思うけど、40歳を過ぎたら今度は自分たちの老後を考えていかないとねって。あっという間に私の年齢になるよ、と。
iDeCo+は退職金みたいなイメージ
iDeCoに加入したきっかけを教えてください
銀行からの勧誘です。その頃、「貯金をしていかないとな」と考えていました。それで自動引き落としの手続きをしたときに、iDeCoや投資信託を薦められたんです。
銀行とのお付き合いは必要だったので、「じゃあ入ろうかな」と、あまり深く考えずに加入しました。投資信託もその時に始めました。やはり銀行はいろんな情報を教えてくれるので、ありがたかったですね。
iDeCo+以外の制度だと、保険に関してはかなり利用しているようだと思います。60歳になった社員の退職金と、役員退職金の準備として計画的に加入しています。
iDeCo+を導入した際の、社内での反応はいかがでしたか
まずは私の実績を見せたんですが、けっこう驚かれました。私も驚いていますが(笑)預貯金の金利がほぼ無いこともあり、「iDeCoはこんなに増えている!」とびっくりされましたよ。
ただ、みんなも投資をした経験がなく、下がったときにどうなるのかなどの不安もありました。私も説明できるほど詳しくないので、「じゃあ1回、みんなで勉強会をしよう」という話になりました。勉強会は前田さんのオンライン5回コースでお世話になりました。
当時は企業型のDC(確定拠出年金)も選択肢としてあったので、iDeCo+とどちらにしようかと思いました。
iDeCo+に決めた理由は何でしょう
iDeCo(個人型)と企業型を比較すると、iDeCoの方が情報が豊富で、比較しながら従業員が好きなところを選べるというメリットがあったからです。そのときは中国銀行とやり取りしたんですが、いろいろな資料をもらいました。前田さんとも、DC(企業型)とiDeCo+のちがいなどをメールでやり取りしながらいろいろと教えてもらいました。
中国銀行からは、コンサルと導入で25万円かかると説明を受けました。企業型DCの制度導入後のプラン管理費が3万円で、対象者が何人でもこの金額のようでした。それから記録管理料と資産管理料が1人あたり年間6,000円かかります。こちらは対象者が3人だったら年間4万8,000円ですね。
ただ、金融機関を中国銀行に固定せず、もう少し自由に選べるようにスタートしたほうがいいとも思いました。それで自分たちでも、iDeCo+を勉強しようということになったんです。前田さんのオンライン勉強会は、すごくありがたかったですね。
会社が拠出するiDeCo+の掛け金はどのように設定されましたか
入社の年月日によって3段階の設定をしました。入社から3年以上10年未満、10年以上20年未満、20年以上の3つの区分にわけて金額を設定しています。
入社から3年未満の場合は、会社からの拠出はありません。iDeCo+は退職金みたいなイメージですから。
会社から掛け金を出すといっても、お給料に完全に上乗せするという意味ではないことを事前に説明しました。昇給のタイミングで、昇給・賞与を丸々いま受け取るか、iDeCo+に掛けかえて会社からプラスして拠出するかの制度にしたからです。
通常なら昇給するとお給料は上がるが、社会保険の等級も上がってしまう。でもiDeCoの掛金として受け取ると、等級は上がらずに強制的な積立貯金になるといった点は社員さん側のメリットだと思います。
手取りは増えるという話は、みんなも腑に落ちたかなと感じています。
昇給として受け取るか、iDeCo+の掛け金として受け取るかが選択できるということでしょうか
そうです。
ずいぶんユニークな掛け金にされましたね。社内での評判はいかがですか
会社としても「昇給は絶対に毎年いくら出せる」というものではない。そのあたりは賞与で調整せざるを得ないけれど、掛金をiDeCoで受け取ると社会保険料の負担と所得税の合計が減らせるのは確実です。つまり昇給を給与として受け取ってから貯蓄に回すのか、給与として受け取る前にiDeCoの掛金にするのかで結果的に手取りは増えるという話は、みんなも腑に落ちたかなと感じています。
社員の4名がiDeCo+に加入されているのでしょうか
iDeCo+に入っているのは3名ですね。あとの1名はまだ入社して3年経っていないので、お話はしていません。
最後まで働いてくれた人には、ちゃんと本人たちの取り分もないと、と思っています。
勉強会だけでなく、普段から社員さんとコミュニケーションを取られているようですね
結構、話をするほうだと思っています。というのも、多分そんなにお給料を出せていないんですよね。うちは創業29年ですが、独立して3年間は個人事業主でやっていました。4年目のときに、そろそろ正社員として人に来てほしいとなり、法人化しました。
やはり会社として「人に来てほしい」と言うからには、社会保険に入ったり退職金をきちんと出したり、残業代をつけたりしないといけません。すぐには整備ができなくても、最後まで働いてくれた人には、ちゃんと本人たちの取り分もないと、と思っています。そのために、少しずつやっているという感じです。
人材育成のためには、きちんとした制度を設けることが重要ですね
中退共に入るときにも、保険会社や銀行から「中退共は社員に直接振り込まれる。もしも不正があったり、裏切られたりしたときにもお金がいってしまうよ」と言われました。だから入社から3年くらいはその人を見るということで保留にさせてもらう。でも3年以降は、その人に何があってもそれまで働いてくれたことに、一定の金額は支払うべきだと思ったんです。
いざとなったら払いたくない気持ちになったとしても、代表者にも責任があります。その分、社員さんたちにも頑張ってほしいという想いもある。中退共はそういう意味で掛けました。
万が一、懲戒などになったとき、保険だったら支払わないという選択も残せる中で、長い勤続に対してしっかり支払うという考えは素晴らしいと思います。
その想いが今回のiDeCo+導入にもつながっているんですね。
ところでiDeCo+を導入する際の手続きはどうでしたか
ネットに書式が載っているので、いろんなサイトを見ながら書いたのですが、実際には2回ほど書類が戻ってきました。手続きは私と勤続20年近くになる事務の社員がメインで対応しました。
書類に修正が必要な場合は、戻ってくる前に直接電話があるので説明されたことを直すかたちです。修正自体は簡単でしたが、言葉の使い方などで修正が入りましたね。
たとえば対象者のところは就業規則と合わせないといけません。「正社員」「従業員」「社員」などの言葉の書き方です。書類に「従業員」と書いたら、「就業規則には『従業員』という言葉は使っていないので直してください」と修正が入ります。そういうところはお役所だなと感じました。
そういうのもあり、スケジュールは1カ月ほど遅れました。それでもうちは就業規則があったから、スムーズに進んだと思っています。会社によっては就業規則を用意しておらず、そこから作成する場合もあるでしょう。
社員さんたちから運用面への不安の声などはあがっていますか
まだそんなに長期でやっているわけではないので、不安みたいなのは挙がっていません。「コロナの関係で下がったよね」という話はしています。でも、みんなにはiDeCo+は下がったからといって運用商品を変えたり止めるのではなく、長期で様子を見るものだと伝えています。
私も専門家ではないので適切なアドバイスができず、最後は自己責任みたいな部分もあります。そういった教育は外部から受けるような体制を、社内で作っていかなければとは思っています。
長期間続けることは力になるという点はメリット
iDeCo+を導入したことによるメリットをお聞かせください
長期間続けることは力になるという点はメリットですよね。その点についてはみんなに私のiDeCo+の現状を見せて、「長く続けたらこうなるからね」と話していました。
自分が65歳になったときの状況もイメージできるのもメリットです。30代40代の人は、自分の老後なんてイメージできないでしょう。このまま長く働くかどうかも分からない。今の仕事を辞めるかもしれないし、転職するかもしれない。
会社として昇給はこのくらいで賞与はいくらになるという話はできます。そこには会社の事情もあるからマイナス面も含めて伝えます。でもiDeCo+を65歳まで続けたら、いくらになる、中退共ではいくらになるから、これを絶対に下げずに継続しようという話もできます。
経営状態はわりとオープンなのでしょうか。承継についても考えていますか
結構、オープンですね。決算書なんかもみんなに回していますし、私の報酬額も知っていますよ。うちは、あと何年かしたら私が会社を退きます。そうなったら最低でもこれくらいはしないといけないし、責任とリスクもある、それまでの間は昇給していってという話をします。
そのあとの承継については、今40歳の社員さんに継ぎたいと考えています。そういったこともオープンに話していますよ。それがいいのかなと思っています。売り上げが下がったら、こんなふうに赤字になるし、賞与にも影響するとか。
会社から支払われるお金の財源はひとつですが、社員さんのお金のもらい方は2つある。お給料でもらうか、掛け金でもらうかによって、その先にあるものがちがってきますね。
私はiDeCo+に入ったことで、役員報酬を下げたんです。掛け金と合わせて計算すれば年間で変わりませんが、報酬を下げたことで等級も下がり、傷病手当金や将来受け取る年金額が下がります。
これは人によってはデメリットを感じるかもしれませんよね。 ネットでは、iDeCoの拠出時と受け取り時の節税などが強調されていますが、導入時には、そういったデメリットも伝えたほうがいいと思っています。 ネットなどで強調されている節税のメリットがすべてではなく、一方でデメリットもあることをもっと伝えていってほしいですね。
なるほど、確かにiDeCo+の掛金はご自身の資産にはなるけれど、その分社会保険の支払いに回らないと老齢厚生年金が増えるわけではありませんからね。
うちに関しては、会社の規模はすごく小さいけれど、制度の面は安定しているからねとオープンに話しています。社員たちからも安心して働いてもらえるような感覚が伝わってくるのは、すごく良かったと思います。
このたびはお時間をいただき、本当にありがとうございました
iDeCo+(イデコプラス)導入をサポートしたFPについて
前田菜緒(まえだなお)
fpsdn.net/fp/nmaeda/
保険代理店に7年間勤務。現在は子育て世代向けに相談、セミナー、執筆などを行っている。
子どもが寝てからでも相談可能!子どもの成長を見据えたライフプラン実現のお手伝いをします。