専業主婦への優遇だ!との問題提起から見直しが検討されていた配偶者控除の廃止案が流れたと思ったら、なんと配偶者特別控除の枠を拡大する方向で検討が始まったとか・・・
日経新聞 2016年11月6日「パート主婦の減税拡大、配偶者特別控除を活用」
日本においては、いわゆる第三号被保険者優遇の税制、社会保障制度になっているのは否めません
106万円の壁についてもなんどかコラムをアップさせていただきましたが、「妻」が社会で働こうとすると、働き方によって損得が発生してしまうのです
例えば、会社員OBが受け取れる年金に「加給年金」というものがあります
金額にすると年間約40万円なのですが、これは「妻が夫より年下でかつ妻自身の厚生年金加入20年未満」である場合に限り支給される年金です
妻が65歳になり自分の老齢年金が始まると加給年金はストップしますが、それなりに存在感がある「家計の収入」です
例えば、若い頃10年ほど会社員勤めをしていた妻が45歳になり子育てが一段落したことを機に、再就職したとします
給与30万円で60歳まで頑張って働くと、自分自身の老齢厚生年金が年間約30万円増えるので家計も潤います
しかしもし夫が5歳年上だと夫が65歳になった時に受け取れるはずだった「加給年金」約40万円が妻の厚生年金加入20年以上となるため支給されなくなるのです
40万円の加給年金分がマイナス
30万円の妻の老齢厚生年金がプラス
差し引き10万円がマイナスです
加給年金が支給されるのは、わずか夫との年齢差分の5年間なのですが、それでもずっと受給できる老齢厚生年金30万円の上乗せよりも加給年金の40万円の方に魅力を感じ、だったら働かない方がマシと判断される方も結構いらっしゃるのです
これはひとつの例ですが、これだけにとどまらず「妻」が働こうとするとあちこちに「税金の主婦優遇」がもたらす「トラップ」が発生するのです
正直、こういう国の制度からくる働き方の損得に自分の生き方を合わせるのはナンセンスだと思うのですが、多くの方は制度のしがらみをぶっちぎって稼げるだけのメンタルもスキルもないので、結局は国が周到に用意した「税金の主婦優遇」の中で人生を終わらせてしまうのです
私はこの主婦のための税制優遇って、言ってみれば鳥かごのようなものだと思うのです
それも結構居心地の良い鳥かご
そこそこ大きいので、不便もかんじない鳥かご
そこにいると生活にも困らないし、そもそもなぜ鳥かごの中にいるのかなんて疑問を抱く必要もなくなるので、自分自身いつのまにかかごの中の鳥であることも忘れてしまう・・・
結果、女性の経済的な自由、自分でお金を稼ぐ自由、自分でお金を増やす自由、自分でお金を使う自由を奪ってしまう鳥かご
そんな風に思うんですね
何も会社員で働かなければならないと言っているわけではありません
ただ、自分がこれからの人生において社会とどうかかわっていくのか、いきたいのかを国の制度に左右されるのがばからしいと言っているのです
なぜかというと、現在の日本の制度はすべて「結婚」という仕組みありきで成り立っているから
「結婚」という枠がなくなった時、あるいは「結婚」という枠を選ばないと決めた時、すべての優遇がなくなってしまうとても危ういものだからです
結果カゴの中の鳥はいつのまにか飛ぶことを忘れ飛べなくなってしまいます
結婚というカゴがなくなり、別のところに飛び立ち新しい環境で生きていかなければならなくなったのに、いざとなると飛ぶこともできなくなっている鳥
世の中、そんな「元」主婦、たくさんいます
ある方は、夫が10年以上単身赴任
定年間近で自宅通勤可能なところに転勤となり、子どもたちも大きくなったのでこれから夫婦ふたりの生活が始まると思っていた矢先に、単身赴任先で仲良くなっていた女性と再婚したいといきなり離婚を切り出されたとおっしゃっていました
でも、この方経済的な自由がまったくないんですね
ずーっと第三号被保険者で働いた経験はずっと昔、だから今から働くこともできないし、自分の年金もわずかだし、今頑張っていることは「夫から送りつけられた離婚届に判を押さないこと」
お話を伺っていて私もとてもやるせない気持ちになりましたし、ご自身もお金の自由がないことでとうに壊れてしまっている「結婚」にしがみつかなければならない情けなさに涙していらっしゃいました
「結婚」は個人の生活の場であり、あくまでも個人の選択
「結婚」に紐づいた税制優遇、社会保障優遇はやめるべきだはないのかなと、私は個人的に思っています
ただ社会の仕組みが変わるのは時間がかかるし、変わるかどうかも分かりませんから、自己防衛としては、「女性は自らかごに入らない」という意識が必要ではないかと思います
少なくとも、いつでも飛び立てるように力を蓄えておくべきです
確かにかごの中は快適です
でも、いつかごがなくなるかも分かりません
夫が離婚を切り出すかもしれないし、夫が亡くなるかもしれないし・・・
そんなことが起きてしまった時、飛び立てない鳥は悲しいです
もっと暮らしやすい環境を求めて飛び立てる力
自分でえさを探して飛べる力
家族を守るために戦える強い翼
そういう力を知らず知らずに退化させてしまう国の主婦優遇とその仕組みに自分を合わせてしまうという安易な選択
もったいないと思うのです
飛べる鳥は飛べ!
飛び方を忘れてはいけません