大北 あかり

シニア保険(終活保険)ってどう思う?と、親から聞かれました。どんな風に話したらいいですか?

「入院・介護・葬式費用、子どもたちに迷惑をかけたくないから、入れる保険に入っておこうかと思うのよ。どう思う?」と、両親から相談を受けた娘の知葉(しるば)さん。

ご両親から相談を受けた際に、良いか悪いかを即答せずに、どんな保険なのか資料やパンフレットを一緒に見ようと提案されたのは、とても良い判断だったと思います。

なぜシニア保険が気になったのか?
ご両親の気持ち・心配・不安なことを聞くことから始める

コロナ禍も長引いて、外出がままならなくなって、お家時間が増えましたね。テレビの前で過ごす時間が長くなるのもうなずけます。

私もテレビを見る時間が増えていて、シニア世代のみを対象にしたCMをよく見ます。

シニア世代の方々が出演し、同じ世代の心配ごとや不安に思っていることをダイレクトに広告に利用しているので、何度も何度も見聞きしていると、だんだんと気になりだして、「加入しないと損なのかも・・・」とか、「保険金が出れば安心かも・・・」、「数千円くらいならお守りに持ってると安心かも・・・」と、気持ちが動いてくるのも分かります。

私もサプリメントや健康食品、化粧品など気になるものが広告で、私の不安や悩みを解決してくれそうかも!?と感じたら気持ちが動いてしまいます。

広告で心が動くのには、『気がかりなこと』があるからですよね。

この『気がかりなこと』を聞かずに、親が考えていることを先回りして勝手に想像して、自分の意見や判断を押し付けてしまったりすると、反発されたり、相談するのが億劫になったり、感情的にこじれて、親子といえどもその後のコミュニケーションに支障をきたしやすくなります。

ご両親が元気なときに、ご両親の気持ちや考え方、気がかりなことなどを『シニア保険』の相談を切り口に、資料やパンフレットを一緒に見ながら話してみてください。

否定せずに肯定や賛同をしながら話を聞く

CMが気になっているということを否定せずに、「私もこの保険のCM見たことある。よく見聞きするから私も興味があって検索したりしたよ。」と肯定するように話を切り出してみてください。

「こんな受取金額の少ない保険、無駄・必要ない!」とか、「持病があっても入れるなんて、不安をあおって高齢者心理に訴えてるだけやし、やめとき!」など、くれぐれも否定から話を切り出さないようにしてください。

人は自分の意見を肯定する人を信頼します。
ご両親の気持ちを聞かずに否定してしまうと、話したがらなくなってしまいます。

親の思いや気持ちを聞くことができるタイミングを大切にしてください。
ご両親の気がかりや不安、大事にしたいと思っていることなどをじっくり聞いてみましょう。

子どもたちに迷惑をかけたくないとの気持ちが強くて心配が膨らんでしまっているかもしれないし、子世代が勝手に想像を膨らませて、過剰な心配をしている場合もあるかもしれません。

まずは、ご両親の気持ちを肯定し、賛同する気持ちで聞いてください。

両親の思いを尊重した対応策が話し合えるようになります。

現在加入している保険を振り返ってみてもらう。

ご両親の気持ちを確認したら、今入っている保険を振り返ってもらうことを提案してみます。

「今、入っている保険ってあるの?」
「保険証券とかは、どうやって保管してる?まとめたりしてる?」
「保険証券の見方分かりにくいよね?お母さん・お父さん、見方分かる?」
「同じような保障があるかもしれないね、保険証券一緒に見てみようよ。」

保険証券の保管場所を一緒に確認できれば、ご両親も現在加入している保険を振り返りやすくなります。

どんな目的(どんな保障が必要)で、この保険に加入したの?

今入っている保険が分かったら、この保険に入った目的を聞いてみます。気になって検討していた『シニア保険』と似たような保障をすでに持っていないか確認してみましょう。

以下のように表にすると確認しやすくなります。

現在加入中の保険の内容が確認できたら、公的な保険と合わせてこれからの万が一への備えをどう準備していくか、話し合えると安心です。

「保険商品」も「老後の暮らし」も少し離れて俯瞰してみる

民間の保険を考えるときは、すこし離れたところから全体を俯瞰してみます。

民間の保険の役割は、公的な保険(健康保険や年金、介護)の補完なので、公的な保険では足りない部分を民間の保険でカバーすると無駄がありません。

病気やケガで病院にかかったら

日本では病気やケガで病院にかかっても、医療費の自己負担は原則3割(年齢や収入により1~3割)で治療が受けられます。

そして、1か月の医療費がどんなにかかっても、保険適用治療なら一定額以上は払わなくていい、つまり自己負担の上限があり、上限額を超えた場合にその超えた額を支給する制度「高額療養費制度」があります。さらに、負担を軽減する①世帯合算という仕組みや②多数回該当という仕組みがあります。

参考:70歳以上の方の高額療養費 自己負担限度額(全国健康保険協会HP)
www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sb3190/sbb3193/300725/

公的保険の対象外部分への備え

公的医療保険の適用外部分は全額自己負担になります。手術や入院には意外といろいろな出費はかさむので、適用外部分を具体的に確認しておきましょう。

  • 自己負担限度額分
  • 入院中の食費代の一部負担(1食につき460円は自己負担)
  • 少人数の病室や個室に入ったときの差額ベッド代
  • 入院に必要な身の回りの日用品類や親族の交通費などのその他雑費
  • 先進医療にかかわる費用・患者申出療養にかかわる費用

介護が必要になったら

日本では、40歳以上の方を被保険者とした公的介護保険制度が利用できます。

「介護が必要」と市区町村に認定されたとき、利用者は、要介護度に応じた介護サービス費用の月額利用限度額の原則1割(収入により2割または3割)と限度額を超えた費用を負担します。

公的介護保険制度にも自己負担を軽減する制度「高額介護サービス費」、「高額医療・高額介護合算療養費制度」があります。

注意が必要なのは、限度額を超えるサービスや、公的介護保険の給付対象外サービスは、全額自己負担となることです。

まとめ

親の老後が心配ながらも、なかなか切り出しにくいという方もいらっしゃると思います。離れて暮らしている場合は、お互いを気遣い、会話も用件だけを済ませた遠慮がちなものになり気味です。

知葉さんのご両親のように子世代に意見を求められたり、相談があったときは、ご両親の老後についてご両親がどんなふうに考えているのか、ご本人の希望や想いを聞けるチャンスです。

ご両親が元気なときに、本人の希望を聞くことができていれば、いざという時に子世代が判断を迫られたときに、本人の意思に沿った対応ができ、後悔のない対応ができます。

高齢になった両親は、若かったころとはやはり違います。親子のコミュニケーションをよくするために、子世代も高齢の両親への対応を変化させる必要があります。

老後についてどのように両親が考え、気がかりに思っているのかを、両親の気持ちを肯定し賛同しながらじっくり耳を傾けてください。必要な対策を話し合える貴重な機会になると思います。

ご両親とのコミュニケーションを良好にし、合わせて公的保険制度の知識や支援など、情報収集してください。自分たちだけは難しいなと感じたら、抱え込まずに、専門家に頼ってください。

70代の親を持つFP研究会

私たち高齢期の親をもつ子世代のファイナンシャルプランナーが、高齢期の親とのコミュニケーションの取り方、準備しておきたいことや知識や情報の集め方を発信していきます。

できるだけ両親の意思を尊重したい、そのためには何をどうすればいいか、一人で悩むとしんどいです。周りには様々な専門家がいます。専門家を頼る入口を知るためには、制度や知識が必要です。
同じ高齢期の親を持つ立場から同じ目線で情報発信をしていきます。

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